福島県いわき市の山あい、遠野町。ここに、瓶に入ったプリンをつくっている会社があります。株式会社いわき遠野らぱん。
開発担当者と話していて、いちばん耳に残ったのは、この一言でした。
「作るのが得意なんで」
短い言葉ですが、この会社のことは、たぶんここに入っています。初めての味でも、初めての素材でも、まず一度つくってみる。そして、つくり切ってしまう。
これまで発売したプリンは、30種類ほど
これまでに世に出したプリンは、終売になったものも含めて30種類ほど。30は、うまくいった数というより、試した数です。続かなかったものも入っているその数を、隠さずに教えてくださいました。
つくれるものの幅も広いです。工場が持っている営業許可は、菓子、惣菜、清涼飲料水、ソース類、それに缶詰または瓶詰食品。この5つに加えて、化粧品製造業の許可もあります。
許可がたくさんある、というのは書類の枚数の話というより、素材が手元に来たときに、その素材に合う形を選べる、ということです。プリンにするのか、ジュースにするのか、ポタージュか、ゼリーか、ソースか。
実際、この工場から出ていくものには幅があります。ジュース、ポタージュ、ゼリー、ソース、カレー、ドレッシング、ジャム、水羊羹。プリンの会社、と聞いていたのですが、リストにはカレーも並んでいます。
「いろんなものができると思います」。開発担当者は、そう言います。

スープもこの工場から出ていきます。
素材のほうが先で、つくるものはあとから決まります
夏はトマトジュースが主役になり、秋のいまは福島県産の桃ジュースが多くなる。素材の旬に合わせて、つくるものが入れ替わっていく工場です。
プリンに使う素材も、ひとつずつ産地から選んでいます。地元の酪王牛乳。奥会津・金山町の赤カボチャ。南信州の甘酒。どれを使うかを決めるところから、この会社の仕事は始まります。
プリンに使われている素材は、商品紹介の記事にまとめました。
いわき遠野らぱんのプリンのこだわりは、冷やさずに常温で置いておける形に仕立てること。

野菜からつくるシロップ。素材に合わせて、形が決まります。
素材の旬は短く、採れる場所も限られます。おいしい時期につくり、プリンにおいしさを閉じ込めてお届けする。冷やさずに置ける形にできれば、旬の外へも、産地の外へも運べます。福島の外にいる人の手元にも届く。プリンは、その仕事のひとつの形でした。
冷蔵で売られているプリンと同じ品質を、常温で実現した
プリンというお菓子は、ふつう冷たい棚に並んでいます。月色プリンは、そうではありません。
ただ、おいしさには徹底的にこだわっています。
開発担当者はこう言います。「冷蔵で売られているプリンが一番の目標」
冷やさずに置ける形にするだけなら、製造方法はいくつかあります。でもこの会社が目標にしたのは、冷蔵の棚に並んでいるプリンと同じ食感、同じ風味を、常温で出すことでした。目標を高いところに設定し、そこへ行く道を探しました。
常温で長く置けるようにするには、しっかり熱を通す必要があります。しかし熱の入り方が変われば、素材のふるまいが変わるので、冷蔵プリンと同じ味にはなりません。だから常温のプリンには、常温のプリンのための設計が必要でした。

詰め終えた瓶が、次の工程を待つ。
答えは、つくってみた先にありました
熱の通し方には、大きく二つの方向があります。強い熱を短い時間で通すか、弱い熱を長い時間かけて通すか。どちらへ寄せても、素材の側にはそれぞれ別の変化が出ます。答えは両端のあいだのどこかにあって、その一点は、実際につくってみた先に見つかりました。
開発担当者の言葉です。
「その兼ね合いを見て、決め打ちをして、何パターンかテストしながら、一番いいところを見つけた」
あたりをつけて、つくってみて、出てきたものを見て、少しずつ改良する。近道のない手順を重ねた先に、冷蔵のプリンと変わらない食感と風味が残る一点がありました。

ふたを締めるところ。ここから加熱の工程へ進む。
動かせない条件のなかで、素材のほうを寄せる
いまも、その一点は動かしません。理由があります。
「加熱時間は担保になるので、あまり変えたくない」
担保、というのは、冷やさずに半年置けることの根拠、という意味です。熱の入れ方は味の設計であると同時に、日持ちの根拠でもある。ここに手を入れれば、味と一緒に、置いておける時間も変わってしまいます。だから新しい味をつくるときも、加熱の条件はそのままにします。
代わりに動かすのは、素材の側です。加える素材が変われば、水分の量も糖度も変わります。その数字を見ながら、すでに決まっている加熱の条件で狙いどおりに仕上がるところへ、配合のほうを寄せていく。素材を、設計に合わせる。
外から見れば「味がひとつ増えた」だけの出来事です。でも中では毎回、動かせない条件のなかで着地点を探し直しています。初めての素材でも、まず一度つくってみて、そこまで持っていく。
「ある意味で半分手作りなんですよ」

一本ずつ、手で瓶に詰めていく。
非常に繊細な開発の末に生まれたプリンたちですが、開発担当者は、こんなことも言っていました。
「ある意味で半分手作りなんですよ」
材料を合わせて混ぜ、加熱するところは、いまも人の手で作れるサイズの鍋で作っています。一度に大きくつくったほうが早いのは分かったうえで、手が届く単位で仕込み、その積み重ねで一日分になります。
「やっぱりそこは強みかなと」
と、開発担当者は続けます。
ふつう、ていねいにつくられたものは、食品として繊細なので、買ったあとに気を遣うことになります。冷蔵庫の場所を空けて、早めに食べて。ここのプリンは、人の手でつくられたものが、あまり気を遣わないかたちで手元に届きます。
プリンは、あとから乗りました
事業が始まったのは2003年。2005年に有限会社となり、2009年に増資して株式会社になりました。いま月色プリンをつくっている食品加工施設「ドメーヌ・ド・ラパン」が動き出したのが2015年で、月色プリンの生産が始まったのは翌2016年の3月です。
看板商品のプリンは、誠実なモノづくりの延長で生まれてきたのだろうと思います。
月色プリンは2021年にリニューアル。2023年には白い月色プリン、チョコ×甘酒、奥会津金山赤カボチャプリンが加わりました。いま食べ比べセットに並んでいる4つは、7年かけて増えたものです。
従業員は16名(2026年4月現在)。この人たちが、30種類のプリンを発売して、定番となったのが、めっけMONでも販売する4つです。

7年かけて増えた4つ。
めっけMONで買えるもの

月色プリン 食べ比べセット 福島いわき遠野 瓶入り 常温ギフト
セットは3種類あります。どれを選ぶかの目安、4つの味に入っている素材の産地、それに「月色」という名前が遠野町のどんな行事から来ているのかは、商品紹介の記事福島の牛乳、奥会津のカボチャ、南信州の甘酒。ひと箱に入った4つの味にまとめました。
乳成分・卵・小麦のほか、ゼラチンと大豆に由来する原材料を使っています。原材料の表示は商品ページでご確認ください。
いわき遠野らぱんの商品一覧はこちら。