2026年8月18日

カリフォルニア・ソノマ、畑を星の形に割った人——キュリアスの白と赤ができるまで

カリフォルニア・ソノマ、畑を星の形に割った人——キュリアスの白と赤ができるまで

ボトルに、小さく「curious」

めっけMONの棚に、カリフォルニアのワインが2本並んでいます。白のシャルドネと、赤のピノ・ノワール。日本に入ってくるぶんは、ライドウィズが独占輸入しています。

縦書きで「curious」と入った、キュリアス シャルドネのボトル

ラベルは、丸と三角と光の筋を寄せ集めたような柄で、あまりワインらしくありません。瓶を縦に読むと、小さく「curious」と書いてあります。好奇心、という意味です。

ワインの名前が「好奇心」。ふつうは土地の名前か、造り手の家の名前を付けるところです。どうしてこうなったのか。話は2013年、一枚の土地から始まります。

2013年|ぶどう畑にする土地を探していた

創業者の名はアレクサンダー。ワインづくりは、仕事を退いたあとの趣味ではありません。腰を据えた事業として始めています。

世界に通用する畑になる土地を探し続けた末、2013年、カリフォルニアのソノマでここへ行き当たりました。

南を向くと、視界がひらけます。サンパブロ湾。マウント・タマルパイス。その先にサンフランシスコの街並みと、ゴールデンゲートブリッジ。北側は地域公園と地続きなので、隣に何かが建つ心配もありません。

決め手はもうひとつ、水でした。敷地の中に貯水池があったのです。容量はおよそ7万4千立方メートル。学校の25メートルプールなら、150杯を軽く超えます。雨の少ないカリフォルニアで、畑に回せる水を自前で持っている。これは効きます。

丘の上には、家が一軒建っていました。建てたのは前の持ち主、ポール・B・マーティン。2000年のことです。トスカーナの様式とカリフォルニアらしい現代的な造りをかけ合わせた、まわりの景色と喧嘩しない家でした。

丘の上に建つ家と、そのまわりに広がるぶどう畑

丘の上の家と、まわりに広がる畑。遠くに水面が見えます

この人の経歴が、少し変わっています。第二次世界大戦のとき、海軍航空隊のパイロットでした。飛び方も変わっている。星の位置を測って、自分がいまどこにいるかを割り出す。天体航法といいます。計器ではなく空を見て帰ってくる人だった、ということです。

名前が決まったのは、畑ができるより先だった

土地は手に入った。けれど、ぶどうはまだ一本も植わっていません。

その時期のある春の夕方、アレクサンダーは畑になる予定の斜面を見下ろすテラスにいました。日が沈み、空を見上げると、獅子座が光っている。自分の星座です。

ワイナリーの名前は、その場で決まりました。StarWine——星のワイン。ぶどうより先に、名前のほうができたことになります。

星を頼りに飛んだ人が暮らした土地に、星座から名前をもらったワイナリーが建つ。できすぎた話ですが、本当です。

2017年|産地が、地図に載る

アレクサンダーが土地を買った時点では、この一帯にまだ正式な名前がありませんでした。

ペタルマ・ギャップ——海沿いの丘がここだけ途切れていて、太平洋の霧と風がその切れ目から毎日吹き込んでくる一帯です。アメリカの公式なぶどう産地(AVA)として認められたのは、2017年になってから。産地としては、ずいぶん新しい名前です。

風は、ぶどうの中身を変えます。一日じゅう吹かれた実は、身を守ろうとして皮を厚くする。ワインの色や香りは、その皮から出てきます。だから風の強い畑のぶどうは、味が濃くなるのではなく、奥が深くなる。ピノ・ノワールの色がしっかりしているのに、口当たりが重たくならない。理由はここにあります。

収穫を待つキュリアスのシャルドネの房

収穫前のシャルドネ。風に吹かれつづけた実です

2018年|畑を、星の形に割る

産地として認められた翌年、いよいよ畑づくりが始まりました。

丘の起伏に沿って線を引いていったら、畑は星の形になりました。区画の数は12。標高は250フィート(約76メートル)ほど、土は重たい粘土質です。

  • ピノ・ノワールは16エーカー(約6.5ヘクタール)を7つに分けて。朝の光はたっぷり入れて、午後のきつい日差しは外す向きに植えてあります
  • シャルドネは13エーカー(約5.3ヘクタール)を5つに分けて。こちらは東西に並べ、WenteとCaleraという二つの系統を混ぜました

12の区画は、それぞれ別の畑として世話をします。向きが違えば土の乾き方も違うので、その気になれば一区画だけで一本仕込める。ずいぶん細かいことをするものです。実際、白も赤も、この畑ひとつだけで仕上げた単一畑のワインです。

畝に実ったキュリアスのピノ・ノワールの房

ピノ・ノワールの畝。畑の列ごとに、向きも条件も違います

そして、ワインの名前は「Curious」になった

ワイナリーの名はStarWine Cellars。それなのに、ワインには別の名前を付けました。「Curious」——好奇心です。

高い点をもらうために造っているわけではない、というのがアレクサンダーの言い分です。おもしろがること、知りたがること。そこからしか次の一手は出てこない。名前は、そこから来ています。飲む人への「まだ知らない味がありますよ」という誘いでもあります。

やっていることは、案外じみです。いつ収穫するか、発酵をどう進めるか。物差しは一つきりで、「この土地の涼しさが、そのまま出るかどうか」。畑が先、ワインは後。順番がはっきりしています。

仕込みも派手ではありません。赤は、蓋のない開放式のタンクで発酵させます。そのあとオークの樽で10か月。白も同じく、オーク樽で10か月寝かせます。トースト香やアーモンドの香ばしさは、この樽で過ごした時間から来ています。

キュリアスの樽熟成庫。オーク樽が天井近くまで積み上げられている

樽の熟成庫。ここで10か月、静かに待ちます

いま、あの家のデッキに立つと、星が三つ重なって見えるそうです。空の獅子座。星を頼りに飛んだ人が暮らした家。そして、星の形に割られた12の区画。

その畑で穫れたぶどうが、瓶に詰められて、日本まで来ています。めっけMONの棚に並んでいるのが、この2本です。

日本に来た2本

白|シャルドネは、なめらかでクリーミーな口当たりと、冷たい産地らしい張りのある酸が同居しています。キャンディアップルやレモンピールのような果実の香りに、ほのかなトースト香とマルコナアーモンドの香ばしさ。ふくよかなほうか、キリッとしたほうか——白ワインを選ぶときの二択が、この1本の中では要りません。
→ 商品ページ:キュリアス シャルドネ

赤|ピノ・ノワールは、ドライチェリーやクランベリーを思わせる赤い果実の香りに、トースト香とスパイスが重なります。タンニンはきめ細かく、渋みが前に出てきません。北米最大規模の品評会「サンフランシスコ・クロニクル・ワイン・コンペティション」では、2026年の大会で銅賞。初年度にあたる2021年産は、同じ大会のピノ・ノワール部門でダブルゴールドを受けています。
→ 商品ページ:キュリアス ピノ・ノワール

今夜のグラスは、白と赤、どちらにしましょうか。


※お酒は20歳になってから。20歳未満の方の飲酒は法律で禁止されています
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※酸化防止剤(亜硫酸塩)を使用しています

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